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その声は、僕の人生に度々響いては、チョコをくれた。
安っぽくて、甘ったるい、五円玉のチョコみたいな味。代わりに世界から消えていく「嫌なもの」。
僕はなんでも消してしまうその声が少し怖くて、でも何故だか嫌いにはなれなくて。
──おばあさんは誰? なんで僕が見えてるの?
ある日、彼女に聞いた。
《泥棒です。男の子が信じてくれたなら、泥棒は空を飛ぶことだって、湖の水を飲み干すことだって出来るさ》
彼女の何故か記憶に残らない滑らかな声が、歌うように口上を上げる。
後から知ったけれど、それはサル面の大怪盗が、高い高い塔に囚われた、可憐なお姫様を救い出そうとしたシーンのセリフだった。
それから僕は、彼女を「忘れん坊の泥棒」と呼んで親しんだ。幼い子供の頃の、誰にも見えないお友達。その程度に考えていた。
けれど、それは間違いだったんだ。
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