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終わった僕らに恋はない
七月七日の催涙雨が、前日から飾られていた短冊を泣かせた翌週。
僕たちの小さな街に、忘れん坊の泥棒がやってきた。
忘れん坊の泥棒は、その傲慢な敵愾心で気に入らないものを拒絶して、盗んでしまう。
それはオムライスのピーマン、忘れてしまいたい記憶、忘れられない恋心。あるいは、七月七日の催涙雨。なんだって盗んでしまう。
盗まれたものは行方知れず。ただ世界はその存在を忘れて、なかったことにしてしまう。
「だからひょっとして、私達の友達が、知らない所で盗まれているのかもしれませんよ?」
その都市伝説を元恋人である天月詩乃から聞いた時、素直に「なるほど」と感嘆した。
「へえ、じゃあ天月は絶対に盗まないな」
「えー、こんな魅力的な子を狙わない人なんていませんよー」
「冗談はこの暑さだけにしてほしいなあ」
期末テストを終えて、夏休みを間近に控えた学校は、授業も午前で終わるようになっている。
午後からの時間を持て余した僕と天月は、冷房の効いた図書室で暇を持て余していた。
クーラーの駆動音と、微かに漏れ入る蝉時雨。それに混じる運動部の掛け声が、避けようのない夏を今年も連れてやって来る。
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