No.2 不審者2名

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 見上げると、ベンチの屋根の端に座って足をぶらぶらさせている女の子と目が合った。  暗くても表情はわかる距離だ。あちらも驚いているようで、 「髪が……どう見てもチンピラ……で、でも、暗くてよく見えないし気のせいかも……」  初対面の俺を、正面切ってチンピラ呼ばわりした。 「まさかっ……ストレスで白髪に……」  惜しい。たぶん正解は銀髪だ。  軽く心を抉られたけれど、彼女の反応からして、灰色の耳を見られたわけではなさそうで安心した。気にし過ぎて、おかしな聞き間違えをしたのだろう。  なんとなく気まずくて視線を逸らす前に、この目はしっかりと捉えていた。  俺の外見がチンピラなのは認めるけれど、不審度を競うなら相手の圧勝に思える。  中学生……小学生だろうか。小柄な彼女は全身白っぽく、モコモコしている。  パジャマ姿にしか見えないのは、足元がまさかのスリッパなことに加えて、彼女にもが生えているからだ。勿論、俺の頭から直に生えているものとは違う。  被っているモコモコのフードからふたつ、角みたいに伸びていて、片方は折れ曲がっている。たぶんウサギの耳だろう。なかなかに攻めた出で立ちだ。  極めつけは、その手に握っているもの。首を傾げて、半分程欠けた棒アイスらしきものを舐めている。  今は二月だ。そもそも、深夜の庭園でベンチの屋根に登る女の子なんて、普通ではない。こういう時に俺がとる行動はひとつ。  〝逃げる〟だ。  とりあえず別の場所を探そうと歩き出しながら、ちらりと屋根の上を見ると、彼女はまだこちらを見ていた。  こんな違和感しかない光景に気づかないなんて、思っていた以上に参っている。  ……あるいは幻覚。充分にあり得る。今の俺はそういう状態だ。  幻覚なら、〝オオカミ〟と聞こえたことも、見知らぬ人から精神攻撃を受けたことも、六割程度は腑に落ちる。なんてったって二月の丑三つ時だ。あり得ない。  丑三つ時……嫌な響きだ。見えてはいけない類いの……いや、考えるのはよそう。  歩みを速めたところで、再び声が聞こえた。
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