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その日は突然来た。
ガサガサッ
食後ののんびりタイムでティキ達にもたれながらウトウトしていた時だった。
「まさか…本当に人間が居るなんて…!」
此処に来てから初めて見る人間だった。
人間の姿を見てからティキ達はスクッと立ち上がり僕を隠す様に威嚇する。
立ち上がる時に乗ってた僕の頭はそのまま石に直撃しましたよ、はい。
痛みはないけど衝撃は感じるからね!?
「き、きみっ!
早くこっちにおいで!」
周りをキョロキョロしても僕以外に人間は居ない。
「もしかして僕に言ってるの?」
「そうだよ!
君を助けに来たんだ!」
助け?
僕が首を傾げてるとティキ達は完全に敵と認識したのか間合いを少しずつつめ始めた。
「ん?僕助けなんか呼んでませんよ?
今の生活に不便もないですし。」
今までこんなに誰かと触れ合えたのは初めてだし
僕の不幸体質の影響がないのも初めてだった。
前の世界より此処に来てからの方が充実してる。
まぁ?食べられはしますがね
「怖がらなくていいんだよ!
大丈夫だからっ!」
「あ…」
僕の方に伸ばした手をユキに食いちぎられ
唖然としてる男の首をティキが噛みちぎる。
「わぁ、血だらけだ
あ…服は食べるのやめた方がいいと思うから僕が脱がっ…いでっ…痛くないけど気持ちは痛い…」
血で滑って顔から岩にぶつかった。
痛みはなくてもついつい痛っていっちゃう。
顔を擦りながら男の服を脱がす。
「どーぞ!」
服や荷物を回収して男の死体はティキ達に渡す。
んー、何か見た事もない物が沢山あるなぁ。
そんな日の事も忘れティキ達と水浴びして遊んでいた時…
ガサガサッ
聞き覚えのある音が聞こえた。
「えー…今度は何ー」
いそいそとパンツだけ履いて湖のふちに腰を掛ける。
「…報告は本当だったか…
待て、俺は別に敵対するつもりはない。」
出てきたのは白髪混じりのダンディーなおじさん。
ティキ達を見て武器を地面に置き此方に滑らせる。
それでもまだ僕を自分達の体で隠す様に唸る2人。
まぁ、2人ともデカいから充分隠れるんですがね
「君達の物を無理に連れて行ったりはしない。
今日は話しに来た。
ただそれだけだ。
俺は此処から動かない。」
ゆっくりその場に座りティキ達を見つめるおじさん。
ん?何処から見てるかって?
2人の足の間から見てます!
変な体制だけどね!関節ゴキゴキいってるけどね!
「依はどうしたい?」
ユキが僕の方を見て聞いてきた。
何でそんな悲しげなんだろ?
「え?僕?どっちでもいいよー
話すだけなんでしょー?
あ、でも服だけ着たいかなぁ
ユキ達も体拭かなきゃっ!」
いつでもマイペースな僕を見て
一気にユキ達の力が抜けたのがわかった。
「よいしょっと。
それで?お話とは?」
服を着てお腹を冷やさないようティキのでっかいフサフサ尻尾をお腹に置きユキにもたれる。
「君はどうやってこの森にきたんだい?」
「んー、わかりません!
あ、そういえば転けて魔法陣に突っ込んだら此処にいましたね!
だけど、それ以外は知りません」
おじさんは腕を組み眉間にシワを寄せる
「それじゃあ、僕からも1つ質問です。
どうして僕が此処にいるってわかったんですか?」
前の人もだけど
僕はティキ達以外に接触してない。
「実は、俺はギルドの人間なんだ。
あ、ギルドってわかるかな?」
「あっ!あれですよね!
依頼をこなしてお金を貰うところ!」
何か小説や漫画で見たぞー!
「まぁそんな感じだ。
俺はあるギルドのトップなんだが
この森から子供の笑い声が聞こえてくるって言われてな。
国から調査依頼が入ったんだ。
子供が本当にいるなら一大事だからな。」
寝たフリしてるけど
ティキ達も話を聞いてるっぽくて耳がたまにピクピクしてる。
「なるほど。」
「最初は、国の方で使いを出したらしいが帰ってこなかったらしくて俺が来たって訳だ。
で、本題は本当に子供が居たからには君を国に連れて行かなきゃならん。」
その言葉に反応してティキが唸る。
ユキも今にも殺しそうな目してるし。
「おっと。
いや、俺は君が嫌だというのに無理矢理連れきはしない。
だがこの環境は教育上良くないだの煩いのも居るんでな。
俺もこの環境で生活するのは心配だし
説得も兼ねてこれから定期的に顔を出す。
君がイエスというまで無理には連れて行かないし
来るのは俺だけだ。いいか?」
何で2人ともそんな悲しそうな顔をして僕に擦り寄るんだろ?
「んー、別に僕は顔出すのは別にいいですけど
国には行きたくないですね。
此処の方が落ち着きますし。」
2人を撫でると
凄く優しい目で僕を見て顔をペロペロ舐める。
「まぁ、気が変わったらいつでも言ってくれ。
今日の所はこれで帰るな。」
そう言っておじさんは帰って行った。
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