ふたり

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ふたり

4階建の古い校舎。 この高校は何もかもが古くて汚くて、ボロい。 黒板も、机も椅子も。 それなのに夕焼けのオレンジ色の陽が入った教室は 胸の奥がギュッって締まるくらい、綺麗に見える。 僕と先生は1つの机に向かい合って座る。 窓際の真ん中の席。 先生は僕の解いたプリントを、頬杖をついて 見つめている。 ゆるくツーブロックにカットされた短髪が オレンジ色の光に照らされて、本当は黒い 先生の髪が赤く見えた。 先生がプリントを見たまま、ため息を1つ。 僕はそれには気づかないフリで、固いイスの 背もたれに体重をかけて座り、ボンヤリ窓の 外のオレンジ色のグラデーションの空を眺めてた。 「ここ…また間違えてる…」 先生がプリントを俺の目の前に置いて 人差し指でトントンと叩いた。 僕はチラッとプリントを見て、持っていた シャープペンを指先でクルクル回してから 別の答えをサラッと書き込む。 それを覗きこむように先生が見ると 僕のおでこと先生のおでこがぶつかりそうに なって、僕の身体は少し緊張で固くなる。 「正解」 先生は赤いペンでキュっと丸をつけて よし、終わり! と、少しだけ明るい声を出した。 僕はその言葉に返事もしないで 荷物をまとめはじめる。 「今度こそ合格しろよ」 「…ハイ」 二人で教室の戸締りをして、教室を出る直前 先生が慣れた仕草で僕の頬を両手で挟み しっとりと唇を重ねた。
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