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展示を十分に堪能すると、2人はスーベニアショップに入った。商品をちらちらと流し見ながら、金原が思い出したように言う。
「ねぇ、何かお揃いのものひとつ買っておかない?学校のバッグにつけるから」
その言葉に、久住はひとつ瞬いて、「……いいの?」と聞いた。その様子に、金原は怪訝そうに片眉を上げる。
「何が?」
「その……琴音、そんなに気使わなくても大丈夫だよ?」
先ほどの写真の時といい、金原は随分「付き合うフリ」を真面目に捉えてくれているようだった。わざわざ距離を近づけて、親密そうに見えるか確認したり、お揃いのものを提案したり。そもそもここに来たこと自体がその一環と言われてしまえばそうなのだが、久住は今日単純に金原と遊びに来たという気持ちの方が強かった。あまり気を使われてしまうと、浮かれている自分が申し訳ないような気持ちになる。
久住の少ししゅんとした様子を見て、金原は一瞬口を引き結び、何とも言えない表情をした。そして、戸惑ったように瞳を泳がせながら言う。
「気使ってるっていうか……そういうの、1個あったらわかりやすいでしょ。それにこれくらい友達同士でもするし」
「そう……だよね」
そこまで言ってもあまり浮かない様子の久住に、金原は小さな声で呟いた。
「……まぁ、あとは単純に記念?として……せっかく来たし、楽しかったし」
その言葉に、ぱ、と顔を向けると、金原は少し照れたように口を尖らせて視線を逸らしていた。久住は、途端に顔を明るくして、にっこりと笑った。
「俺も楽しかった!」
ニコニコとそう言うと、金原はそう、とそっけなく頷き、キーホルダーのある場所へ歩いて行く。久住はすっかり上機嫌になり、軽い足取りで後を追った。
カップル用のペアストラップもあったものの、カワウソのぬいぐるみストラップがあり、見つけた瞬間2人同時にこれだ、と決めた。手のひらほどのサイズがあるそれは、久住が鞄につけていたら目立つだろうが、その方がカモフラージュの意味があるというものだ。久住は、こういったかわいいものは割と好きだが、こういうことでもないと大っぴらにつけることはできないので、ラッキーだな、と鞄につけた様を想像して微笑んだ。
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