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例えば、完全に自分を裏切らない誰かを傍に置き、表面上は優しく紳士のように振る舞いながら――けれどもその実はこの身体中にうごめく邪な性的欲望を処理して貰う相手がいたなら――。
そこでスターリーは、打ちひしがれているオメガの彼を懐柔し、自分の性欲処理に使うことを決心した。無論、そのことは彼には口にもせずに、だ。
ベイジルが自分の真意に気づけばそれまでのこと。あっさり捨ててしまえばそれで片が付く。
スターリーにとって、彼とのこれは一種のゲームに過ぎなかった。
捨てようと思えば捨てられる。たかがオメガにそこまでの執着はない。
……けれども今日のこの日まで彼を捨てられなかったのは、抱けば抱くほど自分好みの身体になっていったからに他ならない。
そのおかげで赤ん坊ができたことにも気づかず、ここまでズルズルと来てしまった。
しかしそれもこれで終わりにしなければならない。なにせ自分は大手企業の社長令嬢と結婚し、次期社長になる身の上だ。よりいっそう、身辺は清潔を保たねばならない。
自分は常に神々に祝福され、光の道を歩いて行く。
あの見窄らしいオメガと泥沼の人生を歩むなど、アルファたる気質を持つ自分にはあってはならない。
――さて、あの愚かな自惚れオメガをどうしたものか。
誰からも蔑まれ、奴隷扱いを受けているオメガ一人がどうなったところで自分の有利には変わりはない。だが、万が一ということも有り得る。
もし、社長令嬢と結婚する前に今回のことがバレでもしたら――。これまで栄光の道を歩んできた自分に不穏な影が落ちることだけは避けねばならない。
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