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「月光羽、そろそろいいんじゃない?」
雪希が言う。
「そうね」
私はゴールドのボディーに、繊細な彫刻が施されたお気に入りのモデルガン、ルガーP08の照準を合わせた。引き金を引くアクションで霊気を放ち、対象者の我意(がい)だけを抜くことが出来るの。
あのゲスママも、これでもう反省して人に物をねだったって、ましてやもらった物を売るなんてことはしなくなると思うの。
その場にへたり込んで呆然としている真知子さんの元へ行くと、記憶をコピーした。そして、この瞬間の私の記憶を消す。空いた記憶の隙間には、子ども達が誇れるような母親になる様子をねじ込んだ。
「置行堀さん、今夜はありがとうございました」
「いいのよお。久しぶりに人間を驚かせて、本当に楽しかったわ」
置行堀さんは、うふふと笑い、晴一に何かあればまたいつでも呼んでねと言い残し、腰を揺らして鼻歌交じりに帰って行った。
その後ろ姿を見送りながら、真知子さんが何であんなことをしていたのか……少し切なくも感じた。
この辺りは、比較的裕福な人たちが多く住んでいる。真知子さんだって、旦那さんの親の代から住んでいた土地だった。でも、相続やら旦那さんの単身赴任で、想像以上に出費がかさみ、少しでも足しにしようと、自身もパートに出るようになった。でも、周りのママ友はみな悠々自適な専業主婦。
子どもたちだって、今後は私立への進学が当たり前だなんて、自分とはあまりに違う生活に不安と嫉妬のような感情をいだき、腹いせに目に付いたブランド品などを取り上げ、売りさばくことで憂さ晴らしをしていたようだ。
強欲なふるまいは、格差や今後の不安が最大の原因だったようだが……
まぁ、この心理は今後の創作で、とても役に立ちそうね。
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