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塀を伝ってひょいと屋根に飛び移ると、依頼者の女の子の部屋に行った。女の子は自分の部屋で机に向かっている。宿題をしてるのかな。部屋の窓に近づきカリカリと窓を引っ掻いて、ナーンと一声鳴くとすぐに気がつき、窓を開けてくれた。
「猫ちゃんどうしたの?」
女の子が私の顔をのぞきこむ。丸くて大きな黒い瞳は利発で優しそうだ。猫になった私の姿が、黒い瞳に映った。小さくても私の青い目は澄んでいる。
やがて、女の子のまばたきが減り、とろんと焦点がぼやけた。瞳の中に映った私の目がスミレ色に変わった。よし。では、契約を交わしましょう。
私は女の子のこめかみの辺りに鼻先を当てた。
「あなたの依頼は受理されました。お代に記憶を見させて貰いますね。それと、今夜はこの窓を少しだけ開けておいてください」
そう女の子の頭の中に直接話しかけ、記憶をコピーした。
「分かりました」
女の子はお人形のような無表情で答え、机に戻っていく。しばらく、女の子の様子を眺め、顔に精気が戻ったのを確認すると、雪希と家路についた。
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