2.光太郎の場合

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2.光太郎の場合

『麻里、少し相談というか、聞きたいことがあるんだが……今日、うちに来てくれないか?』  光太郎からそんなメッセージが届いたのは、一学期の期末試験が終わった日のことだ。  沢渡家の両親は共働きで、昼間は家にいない。律は部活が再開し帰りが遅い。  つまり、二人きりで話がしたい、という訳だ。  普通ならば「すわ告白か!?」と身構えるところなのかもしれないけれど、光太郎が私を異性として全く意識していないことは長い付き合いの中でよく理解しているので、慌てはしない。  大方、律には聞かれたくない相談事があるのだろう。  そんな訳で、学校帰りに沢渡家へホイホイとお邪魔することにした。 「悪いね、いきなり」 「なんのなんの、長い付き合いでしょう? 遠慮はいらないから」  申し訳なさそうな表情を浮かべながら、私を迎え入れる光太郎。その表情はすぐれない。  これはなんだか、重い相談かな? と心の中で身構える。
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