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「で、相談事って……?」
リビングに通され、光太郎が淹れてくれた高級そうな緑茶をズズズズと一口いただいてから、単刀直入に切り出す。私達の間に、まどろっこしい駆け引きや気遣いは無用なのだ。
けれども、光太郎は珍しく口ごもって、中々口を開こうとしない。やはり、ただ事ではないらしい。
――そのまま、数分が無言のまま経過し、熱かったお茶もいい塩梅になってきた頃、光太郎がようやく重い口を開いた。
「実は……」
「実は? 急がなくていいから、ゆっくり、光太郎の言葉で話して」
「……ありがとう。実は、聞きたいことというのは……律のことなんだ」
「ほほう……?」
光太郎が律のことについて尋ねてくるなんて、前代未聞だ。
私は二人の間では、中立を保っている。どちらかに肩入れしたりはしない。それは光太郎も律もよく分かっているので、お互いを出し抜く為に私から情報を聞き出そうなんてしたことは、今までに一度もない。
それが、一体どうして? 表情を変えぬまま、心の中で首をひねる。
「その……律って今、付き合ってる奴はいるのかな?」
「……今何て?」
「いやだから……律に彼氏はいるのか? って」
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