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「あ、そうですね。本当はちゃんと押し直して綺麗にしてから渡すつもりだったのですが」
「…………後をつけてきてよかったわ。何も知らないままに渡されたら、これがこんな経緯を経てきたものだとは気づかなかったでしょうから」
魔力の加護を受けたとはいえ、それでも軒先につるされているリボンである。
普段のフィオネルだったら、それを贈り物に使うなどという発想は浮かばなかったろう。
ただ慣れないプレゼントを選ぶという状況、妹のアドバイス、魔術師のお墨付きという幾多の要素が、彼の想像を麻痺させていた。
「いかがでしょうかお嬢様。気に入っていただけましたでしょうか」
「気に入ったも何もないでしょうばーーーーーーーーか!!!!!!!」
結果。
最後の最後で有罪となった執事は、お嬢様の魔法で天高く吹き飛ばされることになった。
宙を舞うフィオネルを見上げ、ムラゾウは隣にいるスズエに訊く。
「どうだろうスズエ……アイリーン様とフィオネル様の絆、深まったのかな……」
「分からへんなあ。ただ、月華の魔術師の思ったとおりにはなったんやろうな……」
水晶の中にかの魔術師が、この光景を見たのかどうか。
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