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目的の曲の名前を入れると、棚のどこにあるかを表示する仕組み。棚番号をメモ用紙にも転写してくれる。大量の楽譜があるここでは、目的のものを探すために必要な魔法の品だ。
それが壊れたということは、確かに楽譜庫の管理人にとっては一大事だろう。どうも誰かの仕業らしいが、そこまで追求する余裕はまだないようだ。
事件――と聞いて探偵を志す主人の顔を思い浮かべ、フィオネルは複雑な顔になる。余計なトラブルに首を突っ込みたがるのは、あのお嬢様の最近の悪癖である。
そうなる前に言いつけどおり、楽譜を持って帰りたい。ため息をついてフィオネルは、目当てにしていた曲のうち、ひとつの名前を入力した。
「……ん? なんだ、ちゃんと出るじゃないか」
『赤-1-1』という文字が浮かび上がったメモ用紙を見て、フィオネルが言う。
だが喜ぶフィオネルとは反対に、イアンナの口調はげんなりしたものだった。
「だから、その表示がおかしいんだって。あと……まあ、いいや。出てきた数字のところに行ってごらんよ。そうしたら分かるから」
「? ああ、分かった」
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