フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット

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フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット

 探偵役、魔王の娘・アイリーン。  助手、執事フィオネル。  第一発見者、ムラゾウ。  事件現場には三人が顔をそろえていた。  ムラゾウの疑いはまだ完全に晴れたわけではない。ただ、今のところは白ではないか、というのがアイリーンとフィオネルの意見だ。  この暗雲立ち込める魔王城で、白も黒もないのだが。ピシャリとひときわ高く雷が鳴った窓の外を見て、フィオネルは思う。  視線を元に戻せば、足元には深紅の絨毯がある。  しかしその一部は、黒く変色している――サイクロプスの血で。  魔王城でサイクロプスが殺された。  何者かによって。解決に乗り出したアイリーンであるが、元々ミステリーに憧れ探偵になりたいなどと言い出していたのだ。この状況は願ったり叶ったりかもしれない。  魔王の娘でありながら、退屈しのぎに読んだ人間たちの推理小説に興味を示したのである。  お目付け役としては頭が痛いが、満足するまで付き合うのもまた、執事としての役目であろう。  もし危機に直面することがあれば、身を挺して守ることも辞さない。  密かに覚悟を決めるフィオネルであるが、そうなる前に、まずきちっと事件を解決することが重要だ。  では、ここから何をすべきだろうか――考えるフィオネルに先んじて、アイリーンが口を開く。 「そうよ、こういうのが『ふーだにっと』というのよね。本で読んだわ」
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