フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット

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「フーダニット。誰が犯行に及んだか、というものですね」  読んだものの影響か、推理小説の用語を持ち出すアイリーンに、フィオネルは相槌をうった。  己が主人ほどでなくても、彼もまたそれなりに人間界の書物には目を通している。  確か、フーダニットの他にも、ハウダニット、ホワイダニットというものがあったはずだ。 「確か、ハウダニットがどうやって犯行がなされたか。ホワイダニットがどうして犯行に及んだか、というものだったはずです」 「ずるいわフィオネル。それ、私が言うはずだったのに」 「も、申し訳ございません」  唇を尖らせるお嬢様に、フィオネルは慌てて謝る。いつもなら冗談で済ませられるものだが、今のアイリーンは本気である。  本気で、探偵というものを目指している。だからこそフィオネルの言葉を「まあいいわ」と流し、彼女は事件の本筋の方へと戻った。 「誰が、どうやって、どうして犯行に及んだか。これを調べることが解決へとつながるはずよ」 「誰が、どうやって、どうして、ですか……おいムラゾウ。念のため訊いておくが、おまえにサイクロプスを殺害するような動機はあるか」 「動機、と言われましても……」  ちょうど目の前に容疑者そのいちがいるので、フィオネルは試しにムラゾウに話を向けてみる。
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