お嬢様は探偵がお好き

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お嬢様は探偵がお好き

 世は戦国。勇者と魔王が争う時代。  暗い空、稲光。照らし出される魔王城――その離れに、天蓋付きのベッドでごろごろする少女の姿があった。 「暇だわー」  長い金髪を波打たせた、赤い瞳の少女。  無論、彼女はただの少女ではない。魔王城でくつろぐ彼女はアイリーン。魔王のひとり娘であり、父からも周囲からも愛される存在である。  黒いドレスをまとい、整った顔立ちは気品にあふれていた。  もちろん、足をパタパタさせながら本を読んでいなければ、だが。 「はしたないですよ、アイリーン様」  やんわりとそうたしなめるのは、執事のダークエルフ。  片眼鏡(モノクル)をした執事の青年、フィオネルだ。何かとおてんばなアイリーンのお目付け役を任されている。  銀髪に褐色の肌のフィオネルは、自らの主人に対して呆れた顔をしながら、紅茶を淹れていた。  しっかり蒸らして数分。よい香りのするお茶を、アイリーンに差し出す。 「勇者一行の噂も耳にします。魔王の娘として、アイリーン様も気を引き締めてもらいませんと。臣下たちに示しがつきません」 「なによう。いいじゃない、こんなときくらいちょっとくつろいだって。帝王学だって魔法の勉強だって、ちゃんとしてるんだから」
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