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お嬢様、現場へ向かう
「殺人事件ね」
現場にたどり着いたアイリーンは、状況を見るなりそう言い切った。
正確には殺モンスター事件、と呼ぶべきか。
魔王城の通路で、サイクロプスが殺されている。
血まみれの廊下に佇む、金髪でドレス姿のアイリーンは非常に絵になる。ただ、いつまでも眺めてはいられない――と、アイリーン付きの執事・フィオネルは、部下たちにてきぱきと掃除の指示を下していた。
「アイリーン様。もうすぐ部下たちがここを清掃に参ります。それまで、あまり時間がありませんが」
「分かっているわ。少しだけ見る」
淡々と答えて、アイリーンは死体の傍に寄った。
『探偵になりたい』――魔王の娘にあらざる願いを口にしたアイリーンを、フィオネルはここに来させたくなかった。しかし本人がどうしてもと言うので連れてきてしまったのである。
なので、フィオネルとしてはあまり現場に足を踏み入れてほしくなく、「時間がない」と言ったわけだが――アイリーンはむしろ挑戦と受け取ったらしい。迷いのない動きで現場検証を始める。
「鋭い刃物でめった切り――か。この傷と出血量、ここが現場とみて間違いないわね」
「最終的には目を一突き、ですか。これが致命傷になったようです」
「一つ目巨人の弱点を知っているわね。傷の量からしても、明らかに殺意があったとみるわ」
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