お嬢様、現場へ向かう

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 潰された一つ目を、アイリーンはそっと閉じてやった。  魔王城の住人は、基本的に死んでも生き返る。あまり時間が経ちすぎていると蘇生は不可能だが、今回のように死後間もないケースであれば、暗黒神の神官の元に連れていくことで蘇らせることができるのだ。  ただ、それでも一度死ぬ、死ぬほど痛いことに変わりはない。  怖かったでしょう、とつぶやくアイリーンの優しさに密かに感銘を受けつつ、フィオネルは言う。 「一方的にやられたのではなく、争った跡も見えますね。戦いで命を落としたならば、彼も戦士として本望だったでしょう」  近くにはサイクロプスの持ち物である巨大な斧が転がっていた。  ひび割れ、傷がついている。床にも一カ所、大きな陥没があった。  この場所で何らかのやり取りが行われていたことは間違いない。そして床の大穴は、サイクロプスの斧の形と一致した。  ほんの少し前に、ここで事件が起こったのだ。  そう実感すると、フィオネルの身体の奥底に緊張が沸き上がった。ゾッとすると同時に、こんなに身近で起きた脅威からアイリーンを守らなければと改めて思う。  そのためには、起こった事件を詳しく知らなければならない。  犯人は誰か。  どうしてサイクロプスを襲ったのか。  そして脅威はどこへ去ったのか――。
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