弁解するやつほど怪しい

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弁解するやつほど怪しい

「ち、違う! オラじゃねえ!」  サイクロプスが殺されていた事件。  その第一発見者であるムラゾウは、質問に激しい反応を示した。  自らの主人と現場検証をしているときに、フィオネルは気づいたのである。ミノタウロスであるムラゾウの肌は赤黒くて分かりにくいが、確かに血がついていることに。  そのことを訊いた直後、ムラゾウは慌てて弁解を始めた。  あからさますぎて、かえって怪しい。  フィオネルが顔を歪めると、ムラゾウは続ける。 「サイクロプスが倒れてるのを見つけて、生きているのかどうかを確かめるために死体に近寄ったんです! そしたら、脈がなくて……オラ、慌てて、報告に……」 「血を拭うのも忘れて俺のところに報告に来た、と。よりにもよってお嬢様の部屋にいるときに……」 「許してくだせえ! 悪気はなかったんです!」  完全に犯人の言うセリフだが、今のところムラゾウがこの事件の犯人である証拠はなかった。  あるのはただ、『血がついている』という状況のみである。
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