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そう言いきれれば事態はこんなにも、混迷してはいなかったのだが――むしろアイリーンは難しい顔で、ムラゾウとスズエに言う。
「……もしかしたら、フィオネルは私の執事の任を解かれてしまうのかもしれないわ」
「えっ」
「なんでや?」
「今度、フィオネルが私付きの執事になった記念の日があるの。ずいぶん経つから、何年目なのかはもう忘れてしまったけれど……その日付けで、ちょうどよく退任することも、ないではないから」
結局は、お父様の命で私付きになったのだもの――と、父親である魔王のことを口にして、アイリーンはうつむいた。
仕事なのだから、何かの事情や都合で異動になることだってあるはずなのだ。
あまりに在任期間が長すぎたために配置換え、という可能性だってある。
執事という職ではなかなかないことだろうが、そのくらいしかフィオネルが挙動不審になる理由が思いつかない。
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