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個人的に月華の魔術師へ贈るため用意した、という線も捨てきれないが、料金代わりと考えた方が自然な流れだ。
だとしたら、執事フィオネルは何かを占ってもらうためにこの館に入った、と思われるが。
さて。
「フィオネル様、何を占ってもらうつもりなのかな?」
「さあなあ。人生についてかもしれんし、仕事のこと、恋愛のことなんかもこういうとこでは鉄板やなあ」
「恋愛……」
恋愛。
その単語に、ムラゾウはあたりの気温がすっと下がるのを感じていた。
原因はもちろん、ここまで執事のことを追いかけてきたアイリーンである。
本人は口にしないが、ムラゾウは今日のアイリーンの言動に、もしや、という思いを抱いていた。
半ば勘のようなものだし、そもそも本人に自覚もないのかもしれないけれども。
今後の展開によっては、これはとんでもないスキャンダルになる――かもしれない。
いずれにしても、どう転ぶかはこれからこの館を出てくる、執事の言動次第である。
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