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頼む、頼みますよフィオネル様――と、背中をつたう汗にムラゾウは、心中で必死に祈りをささげていた。
あなたの一挙手一投足で、これからの魔界の運命が決まるかもしれないんですから。
というか、この氷河の中の活火山みたいなアイリーン様、爆発させないようになんとかしてください――!
そんなムラゾウの願いが届いたのか。
占いの館から、フィオネルが出てきた。
館に入る前まで持っていた花束は、彼の手にはない。
ということはやはり、この館で何らかの目的でもって使われたのだ。
目指すものは、ここにあった――。
そう確信したムラゾウとスズエをよそに、アイリーンがすっと前に出る。
「……フィオネル」
「……アイリーン様?」
尾行のための術を解き、姿を現したアイリーンに。
フィオネルは目を丸くして、立ちつくしていた。
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