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依存 19歳
「異常だ」
塚田が言った。
「お前らの関係は異常だ」
ソファに座る俺の足元には、ソファに凭れて座る伍島がいる。床においてあったコーラの缶にタバコを捨てると、小さく火の消える音がした。
「塚田」
煙草の香りを漂わせたまま、伍島が言った。
「俺は異常でかまわねえよ」
静かな声に塚田が怯む。
「異常で構わない。俺は初瀬に」
依存している。
静かに断定した伍島は、塚田に話しかけながらも俺を見ている。それを見返しながら、俺はいつだったか植物園で見た観葉植物を思い出していた。隣り合っている茎や根がどちらの物かわからないほど絡まり、解いてしまえばその体を支えられなくなるほど複雑に、醜悪に絡まった植物。
それを見たのは以前に付き合っていた女と出かけた時だった、とぼんやりしていた俺を伍島の声が引き戻した。
「初瀬がいないと俺は狂っちまうよ」
「伍島……!」
薄く笑った伍島とは対照的に、塚田は苦しげな顔をしている。俺と出会う前からの付き合いである塚田は、伍島にとって一番親しい友人だった。塚田は俺を嫌っていた。
「初瀬から離れるのは無理だ」
「何で……」
「なんでだろーな」
伍島は嘲るように笑う。塚田を笑ったのか己を笑ったのか、あるいはそのどちらもか。
「塚田」
俺もまた伍島を見返したまま言った。
「俺たちは互いに依存していて、絡まって解けない」
俺を一心に見つめるのは喰われている獣の諦観を滲ませる瞳。
「自分たちでももう、解けないんだ」
いとおしさに目を細める。好きだなんて純粋なものじゃない。愛しているというには余りに醜悪な共生。
「不愉快なら俺のことは無視していい。お前が俺から離れても、俺が初瀬から離れることはない」
個人の世界は狭い。俺たちの世界はもっと狭い。
視野の端で苦しげな顔をした塚田が部屋から出ていくのを見た。俺だけを見つめる伍島がそれに気付いているのか、俺にはわからなかった。
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