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昼下がり 23歳
俺を見つめる余裕のない目を見るのが好きで、カーテンを引いただけの明るい部屋でセックスをする。
昼の日差しを透過する焦げ茶色の髪と、同じ色の目。長い腕と肉のついていない堅い肩。俺とは違う細い体。力で抑えこもうとすれば容易にかなうがそれをしない。というよりは、できない。
余裕のない目。
俺を欲しがる顔。
俺はそれに酷く欲情する。衣擦れの音がなお煽って互いの息を切らす。
「伍島」
初瀬が俺を呼ぶ。目を合わせてから、俺はこめかみを流れる汗を舐めとった。
「もっと」
欲しがれ。そしてもっとお前が欲しいんだ初瀬。その目に俺を映して、その声で俺を呼べ。俺だけを。
乱暴に髪を掴まれ、上向いた顎を捕えられて唇に噛み付かれる。息もできない苦しさに薄く目を開ければ強い視線に絡めとられる。
「馨……」
名前を呼ぶと体が離れる。少しでも離れるのが嫌で、空間を埋め尽くしたい俺は初瀬の首に腕を回す。俺の焦りを初瀬が薄く笑う。
「馨」
お前の名前が好きだ。だから何度でもその名前を呼ぶ。すんなりと長い指が俺の髪を梳いてから目元をなぞり、唇を割って舌を弄ぶ。
「かおる」
「どうしてくれよう」
目を細めて笑う。
「殺したいくらいいとおしい、なんて」
もっと言え。
「あいしてるさ」
もっと。
「恭一」
狂おしいほどに。
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