三章 火野カブ漬け

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「地域に限定的な話でございます。やはり畑を全てを燃やすというのは危険を伴いますから今はほとんど行われておりません。……このカブを焼畑で育てているのは、秋田。叔母様に秋田の知り合いはいらっしゃいませんか。もしいるのなら、その方が送ったものと思われます」 「……秋田っていえば、叔母の出身地です!」 そして、彼女も小さな頃には秋田を去っているから、今も付き合いがあるような友人はいないだろう。 となれば、浮かぶのは唯一。 血を分けた唯一の妹、私の母しかいない。      二  まさか、母が嫌がらせの容疑者とは思いもしなかった。 けれど、二人は仲が悪いのだから、ありえない話ではない。むしろ二十年以上も反目し続けていることを踏まえれば、真実味が増す。 二人の間に、昔なにがあったかは知らない。物心ついた頃には、疎遠な関係だったから私にはそれが当たり前のものだった。尋ねてみたことは何度かあったが、答えはその度はぐらかされてきた。 だからといって、こんな悪質な行為に走るまでとは思っていなかった。母の悪事を信じたくない気持ちが、私を駆り立てた。 「今日は、お先に失礼します」
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