76人が本棚に入れています
本棚に追加
真空パックで封をされた中身は、エコバッグやビニル袋から出てくるなら分かるが、ブランドのロゴには全く馴染まない。
「……一本漬けの大根?」
「うーん。一個ずつは小ぶりだから、カブかな?」
私は江本さんの顔を見て、真偽のほどをうかがう。そうですね、と彼はカウンターの奥からトレーに手を伸ばして裏返した。
「このカブ漬けがどうかされましたか。市販のものではなく、誰かの手作りだとお見受けしますが」
「えっどうして分かるの」
私には出来合いにしか見えない。
「賞味期限のラベルシールが貼ってございません。剥がした後もなさそうですので」
「探偵の噂は本当みたいね、すごいわ、はじめくん。そうなのよ、これは貰い物なの。というより押し付けられたって感じなのよね。実はこれ、今朝私の家のポストに突っ込まれてたの」
「このままの状態で、でしょうか」
「うん、裸で。だから郵便でも宅配便で届けたのでもないみたいなのよね。たぶん直接投函されてるんだけど、差出人はもちろん不明」
それは、なんというかありがた迷惑な話だ。貰っても、どうにもできない。
最初のコメントを投稿しよう!