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「特に変な薬品などは使われていなさそうですね。試しに食べてみてもよろしいでしょうか」
「えっ、大丈夫なんですか。だって安全かも分からないんじゃ」
私は止めかかるが、叔母は「いいよ」と認める。「ただし自己責任で」と付け加えた。面倒ごとを持ち込んだくせに、自分だけ逃げ道まで設けるとはずるい。
そんなずるさを知ってか知らずか江本さんはもう、まるで研究者と言うような顔つきになっていた。ペティナイフでカブを薄くスライスする。
一枚を躊躇いなく口に入れて、すぐに硬直した。額には大粒の汗が浮かび始める。
私と叔母は顔を見合わせた。まさか本当に毒が盛られていたのでは。焦りかけていたところで、江本さんは口を開いた。
「とても辛いです」
それだけ!? と突っ込みたくなった。ひとまず私は安堵してほっと胸を撫でる。と同時に、一切れで汗が吹き出るほどの辛さがどれほどのものか興味が湧いた。
実は江本さんが辛いものに弱いのかもしれない。だとすれば、それはそれで面白い。安易な気持ちで自分も手をつけて、
「うぐっ、これは……」
物を言えなくなった。
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