三章 火野カブ漬け

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鮮烈な辛さだった。一種類ではない。唐辛子のストレートなもの、強い酢の酸味、カブ自体の青々しさからくるもの、それらが一体となって舌を刺してくる。 好きな人は好きかもしれないが……。味覚の敏感な私には、かなり堪えた。こんなものを名無しで送りつけてくるのは、たとえ安全だろうが、嫌がらせとしか思えない。 「食べなくてよかった〜。私辛いのダメなのよね」 とは一人被害を免れた知命の美魔女。口に手を当て、けらけら笑う。 さらにあろうことか、スマホを弄り始め、その末には 「とにかく依頼は、それが誰からか調べて欲しいってこと! 分かったら連絡してね。待ってるよ」 と、さっさと出て行ってしまった。 なんて叔母だ。ういろう代を払っていってくれたのが、せめてものプラスだろうか。あとはマイナスばかりだった気がする。突然店に来て厄介ごとを振りまいて去っていったわけだ。 「すいません、本当」 私は、江本さんにぱちんと両手を合わせる。 「愉快なご親戚ですね。佐田さんの家は明るい声が絶えないのでしょうね」 「……いえ、あそこまでお気楽なのは叔母だけです」 あれが、お固い母の姉とは言われなければ誰も分からないだろう。
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