三章 火野カブ漬け

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それに、母と叔母はとても仲が悪い。口を聞いているのを最後に見たのは、いつだったか思い出せない。 だからこそ、母と喧嘩した時には叔母の存在が頼もしくもあった。そんな彼女が困っているのなら、今日の行動はともかくとして、力になりたいとは思う。 「それで江本さん。分かりそうですか、この漬物を送ってきた犯人といいますか」 私は良い返事はもらえないと分かりつつ、尋ねてみる。 「そうですね、少しではございますが」 「えっ、本当ですか」さすがはお料理探偵だ。 「このカブですが、カナカブという種のものでございます。漢字にして火に野の蕪と書き、その名の通り、焼畑農法で作られるカブでございます。普通は秋から冬にかけて収穫しますが、春にという農家もいるのかもしれませんね」 焼畑、遠い記憶を辿れば、高校生の頃に習ったことがあった。たしか土地ごと燃やして耕す、伝統的な農業の一つだったはずだ。少なくとも、古いイメージがある。 「その焼畑って今でもやってるんですか」
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