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そう安心しかけた時、口からクロワッサンのかけらが床へ落ちた。衣が一帯に散らばる。
「あー、もうほんとついてない」
ティッシュを片手にしゃがみ込んで、ため息をつく。そこで、まだ調べていない場所があったことに気付いた。床下収納だ。
周りの留め金を外して、板を引き上げる。ぎぃぎぃと、嫌な音を立てつつもなんとか床板は開いた。
そこに、見つけた。ガラス瓶に詰められた、カナカブ漬けを。
私はその重たい瓶を歯を食いしばって引き上げる。固い蓋をこじ開けると、漂ったのは店で匂ったものと同じく、つんとした香りだった。
「……じゃあやっぱりお母さんが」
至りたくない真相に、手が届かんとしていた。
確固たるものにするには、味見してみるほかない。数時間前を思い出してだろう。胃が苦しそうにきゅると鳴るのを無視して、一本を小さく切る。
舌にちょんと当てたところで、
「あんた、キッチンでなにやってるの。バイトかじってるぐらいで変な料理して火事起こさないでよね」
お母さんの声がした。
まだ寝ていなかったようだ。私はとっさに瓶を膝下に隠す。カブは、一本丸ごと口に詰めた。
店で一撃でやられたものと全く同じ味だった、大辛だ。
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