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というもの。
「……なんだ、今日もお店にいるの?」
私はその一文を何度か読み返す。
やはりメールでも丁寧だ。そして、このやり取りだけだと、なんだかホストとそれに貢ぐお客さんみたい。そう思った。
休日に『郷土料理屋・いち』へ行くのは、初めてのことだった。
お店に二人きりは、何回もある。けれど、今日は休日だ。誰も来ないことが分かっていて二人というのは、これまでと大きく違う。
なんだか緊張して、行く前からドキドキとしていた。
バイトの時より丁寧にお化粧をしてから、服もなるたけ洒落たものを選ぶ。玄関の立ち鏡に写った私は、まるで初めてデートに行く大学生みたいで、
「デートじゃないし!!」
こう鏡を軽くパンチした。
途中差し入れにと御徒町駅すぐの有名店でどら焼きを買って、早足で店へ向かう。表には「閉店中」の札が下げてあったが、裏口の戸は鍵がかかっていなかった。
金色の髪はカウンター席で、空調の風に揺れていた。
「あぁ、佐田さん。いらっしゃいましたか」
ノートに目を落とし、ペンを回す。
珍しく、私服姿だった。
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