三章 火野カブ漬け

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お茶を入れてもらったら、少し遅めのお菓子の時間になった。 休日だからだろう、店全体の空気がいつもよりまったりとしていた。いるだけで家より心地がいい。 すぐにでもお母さんの話をしたくて来たけれど、すっかり心変わりしていた。なにせ今日は休みなのだ。急がずともよい。焦ったせいで昨日は賄いを食べ損ねたばかりだ。 「江本さん、日曜日もお店に来てるんですね」 「たまにの話です。毎週というわけではございません」 「いつものお休みの日はなにをしてるんですか?」 「……料理を」 「平日と変わらない!」 たわいのない会話をする。佐田さんは、と聞かれて、私も最近少しだけ自炊を始めたことを話した。 「この間、アボカドを買ってみたんですけど固くて固くて。なんとか包丁でえぐったんですけど、あんなに固いものなんですか?」 「あぁ、頃合の問題でございます。アボカドは追熟といって、しばらく置くことで身が柔らかくなるのです」 「あー、バナナみたいな?」 「はい、まさに。果実類にはそういう種が多く存在します。メロンやナシなどもその一つでございます」
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