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「全ての謎は上野御徒町の郷土料理屋へ」
たかた ちひろ
一章 山梨・ほうとう、群馬・おっきりこみ
一
運命なんて、もう信じない!
人で溢れた御徒町駅前の交差点、私・佐田結衣はその決意に拳を固めた。すーっと桜の匂いがする春の空気で深呼吸。信号が赤から青に変わると、誰よりも先に道路へと躍り出て、我先にと反対に渡る。湧き水のように人を吐き出すアメ横を、一人ずんずんと遡っていく。
「──お姉ちゃん、大学生でしょ? だったらさぁ就活の合間、うちのクラブで働かない……あっ、いややっぱり大丈夫! です!」
あんまりひどい形相になっていたのだろう、お水の勧誘が勝手に引き下がっていったが、気にしない。
元々私はそういうツラなのだ。細く尖った目は、キツネのようとよく言われてきた。少し機嫌が悪くなると、人を怖がらせることもあるのは承知している。
そんなことより、今はとにかく酒だ。
行くあてはなかった。飲み屋で、すぐに座れるところ。条件はそれだけ、アルコールに浸れればどこでもいい。
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