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中途半端を許してくれる雰囲気ではなかった。言葉だけではない、心の奥底までだ。少しでもそこに迷いがあるなら、きっと彼女は私を認めてくれない。
胸に手を当てる。自分の心をもう一度確かめてから、私はこくりと首を縦に振った。
「うん。江本さんが好き」
口にすると、なんだか舌には馴染まなかったけれど、心にはすんと沈みいるものがあった。心が、収まるべき場所を見つけたような感覚だ。
ひふみさんは、そっかそっかと目を細める。また角砂糖を一つ落とした。
「本当はね、初めて会った時から薄々気付いてたんだ。そうじゃないかなぁって」
「そうなんですか?」
「うん。女の勘ってやつ。でも、そしたらさたっちがライバルじゃん? だから知らなかったフリをしたの。しかも弱みに漬け込んで、協力までお願いした。ほんと根性悪いね、あたし」
「……そんなことありません」私は言い切って、首を横に振る。
たしかに見方によっては、善人ではないかもしれない。でも裏を返すなら、それは好意の強さに他ならない。真実を聞いたからと言って、彼女を憎む気には全然なれなかった。というより、なってはいけない。
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