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「いきなりそんなことをされると、その、心の準備が!」
「それはこっちのセリフでございます」
「……はい?」
彼は外を伺ってから、扉を閉める。私の腰に回した腕を、ふわりとほどいた。私はまだドキドキとして、自立できず、壁にもたれかかった。尻からずるずると下がっていき、なんとか持ち直す。
江本さんは、仏頂面のまま、もみあげの後ろを掻いていた。
「佐田さん、危険だから来ないように、と伝えたかと思います。お帰りください」
一見冷たい態度だった。凄みさえ感じる。
けれど、私は彼の本音を知っている。心の奥では、私と働きたいと思ってくれているのだ。
「帰りません。だって私の問題ですもん。私がいないと脅迫犯分からないと思うんです! 犯人は私に恨みがある人だから。私、犯人の目星がついてるんです」
だから、強気になれた。自信満々、ぎゅっと右の拳を作って突き出す。ひふみさんとやったみたいに、拳で押し返してほしかったのだが、江本さんは取り合わない。
「ですが、犯人を調査している場合ではなくなったのです」
「他になにかあったんですか? ちなみに何があっても帰りませんから!」
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