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「……そこまでおっしゃるなら、仕方ありません」
「分かってくれて何よりです。それで、なにがあったか教えてください」
江本さんは渋るように口を真一文字に結ぶ。目を閉じて、答えないつもりのようだ。それでも見つめ続けていたら、折れてくれた。
「実は今朝、店に出てみると、こんな警告がありまして」
彼はエントランスの電気をつけると、前掛けの一番小さなポケットから紙切れを取り出す。
小さく折りたたまれたそれを開くと、そこには、昨日とはまた別の脅迫文言が綴られていた。
オンナヤメナケレバミセヲモヤス、と。
「犯人を調査してる場合ではない、と言ったのはこういうことでございます」
「……まさかここまでするなんて」
「時間の予告はありませんでしたが、だからこそ警戒をしていたのです。僕が玄関前にいたのは、そういうわけです」
「それで警察には連絡したんですか?」
「いえ、しておりません」
「でもここまでの脅迫だったら、通報してもおかしくないと思うんですけど……」
「少し事情があるのです」
江本さんは誤魔化すようにそれだけ言うと、今度は前掛けの別ポケットに手を入れる。出てきたのは、
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