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当然誰もいない店内の隅、四人がけのテーブルに、達輝を奥にして一対二で座る。
彼は背中を丸くして、うつろな目を空へ泳がせるばかりだった。魂が抜けたようだが、同時に憑物がとれたような表情にも見える。
どうして私を脅迫なんてしたの。仮にも好きと言っていたのに。だが訊こうとした矢先、達輝が先に口を開いた。
「俺だって気付いてたのか」
彼がすれた目で見たのは、私ではなく江本さんだった。白い喉を振って、問いかけられた店主はこくりと頷いた。
「えぇ、まぁ。気付いたのは、今日になっての話ですが」
さっき、江本さんが事情があるのだとはぐらかしたわけが分かった。犯人が私の幼馴染だったから、すぐに警察に通報しないでいてくれたのだろう。
「うまいことアリバイ作ったと思ったんだけどなぁ。事件があったとき、俺はここにいただろう」
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