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「……えぇ一度は騙されました。ただ、物を落とすくらいなら、そう大きな仕掛けを用いなくとも済む。あなたは昨日、店へ客として来る前に、裏口に侵入し、小細工を仕掛けたのでしょう? 仕掛けは、およそ今回あなたが引っかかったものと同質のものです。どこかに紐を挟んでおいて、それが何かのきっかけで外れれば裏口で物が落ちる。違いますか」
「……あ」
そういえば、私が外を覗いたすぐ後に、大きな物音がした。あのとき、カラクリが作動したわけだ。
「また、あなたは万が一にも他の客が扉を開けて、予期せず仕掛けが作動してしまわないように、営業中プレートをも裏返していた。だから最近では開店待ちが出ることすらあった店に、あなた以外が寄りつかなかった」
「……本当に全部当てるんだな」
江本さんの推理は全て的中していたようだった。達輝は呆気にとられたようで、ふっと短く笑う。
「笑いごとではありませんよ」
だが、無駄なく冷ややかな江本さんの言葉に、その上がった口角はすっと元の位置に戻った。
「なんでこんなことしたの」
その厳しさを引き継いで、私は達輝を睨む。
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