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「……とにかくそれがむかついんだんだよ。だから、お前ら二人を切り離してやろうと思ったんだ。……それで結衣が店をやめるなら、脅迫だけで終わるつもりだったさ。でも、お前は俺を振った。挙句店に行く、なんて言われて、カッとなった」
燃やすつもりは元からなかったんだ、と達輝はスーツの襟を広げて見せる。たしかに、火をつけられそうなものは所持していなさそうだった。たばこも吸わない男だ。
「ただもう一回、バカガイをばら撒いてやろうと思った。それだけで、結衣は考え直すかもしれないってな」
「どうしてバカガイ……?」
「なんとなく分かってるんじゃないのか」
「もしかして知ってたの」
バカガイから連想されるのは、深川めししかない。
でも、あの調理実習は私といっくん二人だけの思い出のはずだ。動揺して短く問うと、達輝はあぁと首を縦に振る。
「小学生の頃、結衣がお熱だった初恋の人がいただろ。たしか、いっくんだったか。
俺はその頃から結衣が好きだった。だから放課後、結衣が居残りしてる時も、お前がなにをしてるかずっと気になってたんだ」
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