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そんなある日、彼は私が美術室でいっくんと仲良さそうにしているのを聞きつけたのだと言う。
それで、いてもたってもいられなくなったらしい。
「簡単に言うと、後をつけるようになった。今考えればストーカーだな」
驚きの事実に、私は言葉が出なくなる。
そんな私をよそに、達輝はまた静かに話を続けた。
「その時に見たんだよ。お前がいっくんと調理実習してんのを。そのあと、ここにきたのも知ってる」
「……じゃあ上野公園にいたのも?」
彼は、偶然じゃない、ときっぱり言った。
「あぁ結衣の後をつけたんだ。昔も、今回もな。昔は結衣を上野駅でずっと待ってた。今回は、仕掛けの下見に、ここに来たとき、お前を見かけたんだ」
私は愕然とする。前提を覆された気分だ。
彼との関係は途中からこじれたのだと思っていたけれど、幼い頃からずれきっていたようだった。
「今回の計画は、佐田さんの思い出を利用したわけですか。犯人をその初恋の人に仕立て上げ、罪をなすりつけようとした。そういうことですね」
江本さんは重々しい調子で言って、腕を組む。
私に向けられたものではないと分かっていてもぞっと背中に震えが走るくらい、その表情は険しい。
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