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そこから鎖が連なって、一つだけ尋ねたいことを思い出した。
「そういえば、どうして壁に書いていた文字のこと、知ってたんです?」
私が、その壁に落書きをしていたという情報を、江本さんに教えた覚えはない。もし事前に壁の落書きを見ていたとして、私が書いたものとはわからないはずだ。
幼馴染が知っていたのは驚いたけれど、それは基本的には私しか知らないはずのことである。
いや正確に言うなら、もう一人。
ちょうど、カチッと火が止められた。料理が完成したらしい。
「それより、まずはお召し上がりください。冷めるといけません」
ことりと、汁が並々に注がれたお茶碗が私の前に置かれる。予想は的中、やはり、深川めしだった。
「食べていただければ分かるかもしれません」
なにがだろう。ともかく私の手は、嗅覚にせかされて、自然と箸に伸びていた。
「いただきます」
手を合わせる。
深川めしを食べるのは、あの調理実習以来、人生で二度目だった。あの時の味はまだ覚えている。だからこそ、思い出してしまいそうで、これまで食べるのは意図的に避けてきた。
でも、これで精算できるかもしれない。
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