二章 とり天

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かなり集中していた。まだ半ばも完成しないところで、はっとした。なにとはなく直感が走ったのだ。ばっとスマホを取り出してみると、時間は五並び。ゾロ目でラッキー、なんて悠長にはしていられない。 「江本さん、あと五分で六時です!! 開店しなきゃ!」 「そうですか。では片付けましょう。佐田さんは、表の準備をしてください」 いつも通り、抑揚のない言いようだった。けれど、絵具をしまう手つきには、焦りが出ていた。規定の配置と違う順序に入れてしまったのだろう、パズルをするみたいに入れ替えている。 「は、はい!」 私は、テーブル席に垂らしてあったのれんをひっ掴むと、腰巻に結んでいたキーケースを手にする。 店の合鍵をもらっていたのだ。万が一があったときのため、とのことだったが、こうも早く使う機会くるとは思わなかった。緊急時とはいえ、使えるのは、なんだか嬉しい。 これで外に開店待ちの人がいれば最高なのだけど。 そう思いつつ戸を引いて、本当に出くわした。 「おぉ、やっと開くんか。待っとったで」「……こんばんは」 坂倉教授と国見さんだった。      ♢ 教授が言うに、開店待ちをしていたのは、
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