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私は丁寧に一切れずつ油に沈めていく。程よく衣が色づいた頃に、タイミングよく引き揚げた。用意されたキャベツの千切りと一緒に盛って、江本さんに了解をとってからカウンターへ運ぶ。
とてもよい出来ではあるが、一週間かけた料理でないことなど、一目瞭然だった。
「なんや、とり天かいな」
「……たしか大分の郷土料理ですよね?」
「ほんまに一週間かけたんか、これに」
坂倉教授と国見さんが、私に見解を求める。
だが、私こそ説明してほしかった。一応店の評判のためだ。嘘を見抜かれまいと、とりあえずの愛想笑いを繕ってごまかしていたら、
「いえ、今ここで十分で作らせていただきました」
種明かしは、本人からあった。話が違う、といった風の目線が一斉に送られる中、江本さんはもみあげを小指の背で耳にかけて、
「まずはお召し上がりください」
どうぞと手のひらを返す。
疑いの目の中でこうも平静を貫かれると、なんだか凄みを感じる。
教授も国見さんも困惑しているのは明らかだったが、ゆっくりながら手をつけ始めた。そして、
「こら旨いなぁ、絶品や。なぁ?」「はい。とても美味しいです」
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