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「国見の論文発表に付き合ってやらなあかんからなぁ。今日ばかりは酔っとる場合ちゃうな」
「いいんですか、教授!」
「あぁ。そらぁ、国見の発表は俺も楽しみにしとるからな」
事が綺麗に収まろうとしていた。
私はようやく昨日の江本さんの態度を合点する。彼は、国見さんが偽りを言っていることばかりか、その本心では「発表してみたい」と思っていることまで、早くから見抜いていたのだ。だから私が頼もうとも、頑なに自分が登壇することを否定したのだろう。
国見さんは、退店するまで何度も私たちにお礼を述べた。結果を報告します、と私に連絡先まで教えてくれる。
そんなやりとりの横で、
「ほな、気向いたらまたくるわ」
教授と江本さんは、別れの挨拶、手をがっちり握り合う。
「次は僕を変な使い方しないでいただけると幸いです」
「ははっ、江本はほんま食えん奴やなぁ」
なにの話だろう。教師と生徒の関係でしか通じ合えない話なのかもしれない。
ぼんやり思っていたら、教授は私と江本さんを見比べ思案顔で顎に手をやる。
「江本は食えんけど、食う側かもしれへんな。ははっ」
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