二章 とり天

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意味は、残念なことに分かってしまった。ちょっと「食われている」イメージが浮かびかけるのを頭を振って払う。江本さんは、珍しく顔を歪めていた。それから金色の髪をしきりに目下へ伸ばす。 いわば言葉の爆弾だった。置き逃げ魔は、ふんふん鼻歌を口ずさんで陽気に去っていく。 「す、すいません! 変なこと言って! 悪気はないんです」 たぶん、坂倉教授はどこにでも撒いてくる無差別犯だ。ならば、国見さんは爆弾処理班とも言えるかもしれない。 「でも、私もお二人はお似合いだと思いますよ! 東京に来ることあったら、また来ますね!」 ただ、コードを切り間違えてしまう新人だった。第二の爆発事故がどーんと起きて後の祭りのお店に残されるのは二人きりだ。 どくどくと心臓が鳴る。噂されるだけで意識してしまうなんて中学生までだと思っていたら、とんでもない。倍近い年齢になっても、照れてしまうものみたい。 話題を変えなければ、今にどうにかなりそうだ。 「えっと……変な使い方をされた、ってどういう使い方されたんです?」 「え、あぁ……」
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