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「それ、食べたいです!」
「よかった。実はもうストックして作ってあるのです」
江本さんは、例の隠し倉庫に踏み入る。抱えてきたボウルに入っていたのは、色とりどりのお餅のようなものだった。
「これは……あんこもち?」
「和歌山の郷土料理、いももちでございます」
「また、いももちですか!? 好きすぎませんか。ってあれ。でも前と違うような」
バターの香りもじゃがいもの匂いもしない。私が手に取りよく眺めていたら、江本さんは既に一つを咥えていた。
「同じ名前ですが、全く違うものでございます。さつまいもと餅粉を捏ね上げた伝統菓子です。中にあんこを入れたもの、きな粉をまぶしたもの、皮ごと潰したものとありまして──、佐田さん?」
「ふふっ、待って、もう無理。あははっ」
やっぱり面白い絵だ。あたかもイタリア紳士といった爽やかな容貌で、いかにもな餅をはんでいる。笑わないではいられなかった。
一見クールでとっつきにくいけれど、実は親しみやすい。少しずつ、江本さんのことが分かってきた気がする。
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