三章 火野カブ漬け

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「ほらクールダウンしな。結衣もういろうもらったら? 落ち着くよ。ねぇいいでしょ、はじめくん」 叔母は首を傾げ、女優顔負けのスマイルを江本さんに放つ。下の名前で呼ぶなんて、馴れ馴れしくないだろうか。 「はい。ではお持ちいたします。僕もちょうど甘味を欲しておりました」 だが、江本さんはとくに指摘もせず用意に取り掛かる。そんな彼をどういうことかと目で追っていたら、 「なぁに、嫉妬? いやー姪の彼氏をそそのかせるなんて、私もまだまだ捨てたものじゃないわね」 「嫉妬でも彼氏でもないから!!」 「あぁごめんごめん。結衣には許嫁がいるもんね。幼馴染の秋山くん。このところ、どうなの?」 叔母も知り合いとはいえ、ここでその嫌な名前を出すかと思う。最近は忙しいのか、しつこく会おうとこそ言ってこないけれど、メッセージが毎日数通届いて迷惑しているところだ。 告白には、もう一度きちんとノーを出した。けれど、それからも連絡は続いている。たぶん、私が旧知の仲である彼を、完全に邪険にはできないことを分かっているのだ。 「結婚式やるなら呼んでね〜」 「もうやめてよ、おばさん!」
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