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背中に悪寒が走り、私は反射的にどんとカウンターを手のひらで打つ。思いのほか力が余って、湯呑みが揺れ、お茶がこぼれた。紙ナプキンに緑のシミができていく。
「……ごめんなさい」
たしかに、ういろうを楽しむくらいの余裕は、持ったほうがいいかもしれない。
後片付けのあと、江本さんを手伝って、私もういろうにありつく。
これまでお土産で貰ったことは何度かあるが、それらと比べても、この上なく美味だった。生地はもっちり濃厚で、こしあんがさらりと口溶けのいい甘さを舌に示す。頬張るごとに満足感が増して、怒りやら恥ずかしさをひとまずどこかへ追いやることができた。
「それで、おばさん。どうしたの」
さらえたあとには、さっきより冷静になれていた。
「友達から聞いたんだ、ここの店長は探偵だって。助手もいて、それが私の可愛い姪っ子って言うから試しに来てみたの」
「それで?」
「実はちょっと依頼があってね。これ、見てもらってもいいかしら」
レザー生地のいかにも高級そうなハンドバッグを彼女は膝上に置く。少し漁るようにしてからテーブルの上に置いたのは、白いトレーだった。
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