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あれから旅館に戻り、夕食を食べ部屋で今日集めた情報についてまとめていると、部屋の扉外から控えめな女性の声が聞こえてくる。
「美花さん。どうかしましたか?」
扉を開けると、旅館の浴衣を着た美花さんが立っている。どことなく表情が暗い。
「すみません、あの……佑梨知りませんか?」
「佑梨さん?」
予期せぬ名前が出てきたため聞き返してしまう。佑梨さんとは昼間大広間で別れてから今まで一度も姿を見ていない。
「昼間別れてからは一度も見てないよ?」
俺の心の声を唯人が代弁すると、美花さんの表情はますます悪くなっていく。
「そ、そうですか……」
「佑梨さんがどうかしたんですか?」
「それが、大広間に行ったっきり帰ってこなくて」
なんでも三十分以上経っても一向に戻ってくる気配がないので、大広間に探しに行ったがどこにも見当たらなかったらしい。
「それは心配ですね」
「はい。受付にいた女将さんにも聞いてみたんですけど見ていないらしくて」
受付は玄関の目の前にあり、宿泊施設と大広間の間にあるから行き来するにも外に出るにも受付の前を通らなければいけない。蛇塚さんが見ていない一瞬に移動したのか、はたまた大広間や大浴場のどこかにまだいるのか。
「とりあえず、旅館内で行きそうなところを見てみようか」
唯人の提案により全員で旅館内を手当たり次第見て回ることになった。
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