1話《学園入学》

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1話《学園入学》

(何で学園なんだよ。)  目の前にある大きな門と、その向こうに佇む見上げるほど大きな白い建物を見てため息が零れる。  ヴィシル=レイビオードは昨夜、今日から竜騎士学園に通うようにと父から決定事項として伝えられた。ヴィシルの意思などお構いなしに勝手に決められてしまったのだ。  「行けば大丈夫だからと言われても、どこに行けばいいんだ?」  独り言を門を入ったあたりで呟きながら、行き先を探すために周囲を見渡す。  敷地内は森のように緑に溢れていて、聞いた話では何体もの竜が降りられるように、拓けた場所も用意してあるという。  「お前、新入生?」  「はい。」  突然声をかけられて慌てて返事をする。一応回りを見て、他に自分のような人がいないことも確認した。  「お前もか。俺も今年からここに入ることになったんだ。シュギ=セリグナだ。よろしくな。」  「ヴィシル=レイビオードです。よろしくお願いします。」  シュギが挨拶と共に手を差し出してきたので、ヴィシルも名前を名乗って差し出された手を握り握手をした。シュギは薄い緑の瞳に綺麗な金色の髪は短く、その髪は逆立っているように見える。そういう髪質なのか自分で意図的にやっているのかはわからないが、ヴィシルはそこには触れないでおいた。  「同じ新入生なんだ。敬語なんて堅苦しいのはなしな?名前も呼び捨てにしてくれ。俺もそうする。」  「わかったよ。それでシュギに聞きたいことがあるんだ。俺、ついさっき着いたばかりなんだけど、どこにいけばいいかわかる?」  「あぁ、受付してないんだな。俺も行くから一緒に行くか?」  「ありがとう。一緒に行ってくれなら助かるよ。」  気さくでありながら、シュギは面倒見が良い人であるという認識がヴィシルの中で出来上がった。  向かった先は門から左の方に行った所にある白に金色の縁取が施されただけの建物だった。  「この講堂で入学式だから、この扉を開けると受付があるはずなんだ。そこでクラスを教えてもらったりして指定の場所にいけばいいらしい。」  「へぇ、シュギは詳しいんだね。」  「そうか?」  軽く説明をしてくれたシュギに感心しながら、中へと入っていくシュギの後に続いて建物に入る。  なるほど、今日は入学式だったのか、とひとり納得してしまった。家を出てくるときに誰も今日が入学式だとは教えてくれなかったのだからヴィシルが知るわけがない。  受付と書かれている所には、カーテンが引かれている個室のような場所が5個、間を開けて設置されていた。それぞれに1から5の番号がつけられていて、一人一人入れ替わりで出入りしている。  個室の前では順番を待つ新入生が列を作っていた。  最後尾に並び、自分の順番が来るのを待つ。  「これ何してるの?」  「受付もあるんだけど、魔力量と属性も調べてる。だから別の空間を作って一人ずつやってるんだ。各クラスに基準値があるから、それでクラス分けをするんだよ。」  魔力量と属性?そんなの聞いてない。あぁ、だからこのピアスをつけるように言ってたのか。 左耳のピアスに触れ、手渡された時のことを思い出す。右耳にも同色のピアスをつけているが、こちらは魔力質と気配を変えるものである。  すぐつけるように煩かったためにその場でつけたけれど、魔力をかなり抑えたということは、この学園の基準値はそれほど高くないと思っていいようだ。  「そうなんだね。」  「何も知らずに来るやつも珍しいな。まぁ、でも説明はこの後あるからそれを聞いてれば大丈夫だろ。知ってる方からすれば眠いだけの時間だけどな。」  周りでヒソヒソと話し声が聞こえる。何も知らずにきたのがそんなに珍しいことなのだろうか。内容が聞こえないせいか、勝手に解釈してしまうが、この学園は有名ということらしい。  初日から目立ってしまったようだ。こんなことならある程度の知識を頭に入れておくんだったと反省する。  順番が来てヴィシルもシュギも、それぞれのカーテンの向こう側へと入っていった。  「ヴィシル=レイビオード君ですね。では、そこの椅子に座って、この水晶に手で触れてください。私がいいというまでは動かないでくださいね。」  「わかりました。」  ヴィシルは担当している女性に説明されるままに、機械に繋がれている水晶へと手のひらを乗せた。  おそらくこの水晶が魔力量を測り、属性を判別する装置なのだろうと思う。触れると自動で測定するのかヴィシルが手のひらを乗せるとキラキラと虹色の光が周囲を照らしていく。  「えっ!えっ!?えぇぇぇぇぇ!?レ、レイビオード君、も、もういいです。もう大丈夫ですよ。手を、手を離してください。」  「は、はい?」  おそらくは講堂全体に聞こえただろう大きな叫び声を、耳を塞いでやり過ごしたヴィシルは、慌てながら女性に手を離すように言われ、首を傾げながら水晶から手を離すと元の透明な色へと戻った。  何かに驚いているようではあったけれど、ヴィシルは魔力量を測ることも、属性を調べることも初めてやったことだ。  もちろん水晶に手を触れたのも今回が初めてであり、女性が何に驚いているのかも、何に慌てているのかもわからない。  「他には何をすればいいでしょうか?」  「あっ、もう、大丈夫です。ちょっと待っててくださいね。」  慌てながらオロオロしていた女性に声を掛けると、ヴィシルがまだいたことに気付き漸く次に進むらしい。  コンピュータへと何かを打ち込んでいく女性が手を止めると、下の方から紙を取り出し手渡してきた。  どうやらコンピュータに打ち込んだ結果が用紙に印刷されて出てくるという仕組みらしい。  「これをどうぞ。おめでとうございます。Sクラスですよ。」  「はぁ。ありがとうございます。」  「これで受付は終わりです。本堂入り口にいる人にこの紙をみせてください。席に案内してくれますから。」  「わかりました。」  よくわからないが、受付は何事もなく終わったらしい。知り合ったシュギはどこのクラスになったのだろうかと、渡された紙を手に入り口へと向かった。  入り口にいた男性へと紙を手渡すと、また驚きの表情を見てしまったが、直ぐに紙は返されしまっておくようにと言われ、小さく畳んでポケットへと入れる。  ズラリと並ぶ椅子の方から別の男性が近づいてくると、それまで入り口にいた男性はヴィシルについてくるようにと言って、椅子が並ぶ方へと歩き出した。  男性についていくとある場所で止まり、ヴィシルに「こちらです。この中でしたらお好きな場所に座って頂いて構いません。」と言い残して去っていった。足元に線があり、その中に椅子が並んでいる。そういった場所がいくつかあるのを見て、ここもクラスごとに分けられているのだろうと思った。  「遅かったな。ヴィシルもSクラスか。一緒だな。これからもよろしく。」  「うん。よろしく。」  既に受付を終えていたらしいシュギが、Sクラスの纏まって置かれた椅子の中の一番後ろに座っていたため、ヴィシルもその隣に座ることにした。  再度挨拶を交わして話していると、徐々に席が埋まっていく。  学園の説明やこれからのカリキュラム、学園長や生徒会長などの挨拶もあり、入学式は長く感じた。 ◇◇◇  「では、自己紹介からしましょうか。私はこのクラスを担当するユイミル=セリアードです。私も竜騎士ですので、後で私の相棒を紹介しますね。」  入学式の後に割り振られたクラスへと行くように言われたため、ヴィシルは今Sクラスとなる教室にいる。  クラス担当と言ったユイミルは緑のウェーブがかった髪をポニーテールにしている小柄な女性だ。瞳は茶色で可愛らしい印象を受ける。  他のクラスが50人前後に対して、Sクラスは人数が少ないらしく14人しかいない。  ユイミルが言ったように一人ずつ自己紹介が始まった。  ある人物が自己紹介をし始めた時、クラス中がざわざわと落ち着かなくなる。理由もわからないヴィシルは全ての自己紹介を、名前を覚えようとするだけで精一杯だ。  全員の自己紹介が終わったところで翌日からの授業内容が説明され、その他注意事項などの話があった。  「1年のうちは殆どが基礎です。明日は竜の生態と基礎魔法をやっていきます。教科書類はその授業始めに渡すので無くさないようにしてくださいね。それと、学園にあるクニシエラ森には許可なく近づかないようにお願いします。」  確かに学園の敷地内には広大な森が存在しているのは確認したので知っている。しかし、近づいてはいけない理由がヴィシルには全く分からなかった。  今日はこれで終わることと、寮に行ったらまず部屋を確認することを言われ、漸く終わる初日から長く感じてしまったが、この先上手くやっていけるか不安になる。  そんなヴィシルの所に自己紹介でクラス中をざわめかせた男子が話しかけてきた。  「やぁ、俺はセザリシオ=ウェドリシア。よろしく。」  「ヴィシル=レイビオードです。よろしくお願いします。」  「敬語はいらないよ。」  寂しげな笑顔を見せてきたセザリシオは、きれいな金色の髪に青の瞳をしている。  肩につくほどの長めの髪を瞳と同色の青の紐でひとつに後ろで結わぎ、品の良いきれいな顔立ちは多くの女性を虜にするだろう。  「ごめん。つい癖で。」  「よかった。ヴィシルでいい?君とは話してみたかったんだ。俺のことはセズと呼んで。」  セザリシオだからセズなのだろう。ヴィシルは略して呼ばれるほど長い名前でもなく、略できる名前でもないせいかそのままで呼ばれることが多い。  「うん?」  何故自分と話してみたいと言われるのかはわからないが、この学園で共に過ごす友人が増えるのはいいことだ。  ヴィシルは他の国から来ているため、この国のことは話で聞く以外よく知らない。一通りの教養は幼い頃から叩き込まれてはいるが、その場に行かなければわからないことも多いのだ。  学園に通う間だけの友人になるとしても、最初から誰とも深く関わるつもりのなかったヴィシルは何とも思わない。  知りたいことが知れるのであれば、それでよかった。  「ヴィシル!この後みんなで集まろうってなったんだけど、お前も行くよな!?」  「いいよ。セズは?行く?」  「うん。俺も行こうかな。」  セザリシオがそう言うとクラス中が静まり返る。セザリシオは嫌われているようには思えないが、距離を置かれているようには思えた。  シュギはセザリシオには聞かず、ヴィシルだけに聞いていたのも気になったが、ヴィシルはその意味がわからないという風に首を傾げる。  移動中にセザリシオと話すヴィシルにも話しかける人はいないと言っていいほどで、話しかけられたといっても確認が殆どでこれから集まってすることについてだった。  「何でセズは距離を置かれてるの?クラスメイトなんだし、話しにくいわけでもないのに。」  「ヴィシルは知らないんだね。他の国から来たからかな?みんなが距離を置くのは俺がこの国の王子だからだと思う。学園にいる間は対等な立場のはずなんだけど。何でだろうね。」  さらりと言われたが、ヴィシルはこの時初めてセザリシオが王子だと知った。  それでも、ヴィシルにとって王子だからといって距離を置く理由にはならない。  何故かわからないというセズにヴィシルは同意出来たのだ。  「そのうち話してくるようになるんじゃない?」  「そうだといいけど。ヴィシルは俺が王子だと知っても変わらないんだね。よかった。」  態度を変える意味がわからない。学園に通う間は対等であるなら尚更のことだ。  親睦会のような集まりは部屋を確認した後に、クラスメイトの自室で行われ、数時間後に解散となった。  「騒ぐのはいいけど、片付けまでしていけよな。王子が残ってんのに貴族のお坊ちゃんが帰るってどういうことだよ。」  「学園にいる間は王子の扱いじゃないから仕方ないよ。早く片付けてしまおう。」  「えっと、あの・・・。僕、大丈夫なので・・・。」  学園にいる間は王子が王子の扱いを受けないのであれば、貴族であっても特別扱いはないはずなのに、普段から自分たちで何もしないからなのか、貴族の子供たちは片づけをせずに自室へと帰ってしまったのだ。  シュギが文句を言いながら部屋に散らかされたゴミを袋へと放り込み、セズが皿などの食器類を流しへ運んでいく。  それを見ながらオロオロとし始める部屋の主であるミュアド=レシキナは王子が片付けをしているのを止めようと必死だ。  そんな中でヴィシルはセズが運んだ食器類を次から次へと洗っていく。  「うん、綺麗になったね。」  「やっぱり男だけだとダメなのか。女がいても変わらないかもしれないが・・・。」  片付けを終えて休憩とばかりに、それまで囲んで騒いでいたテーブルの前にシュギとセズは座りこんだ。シュギが言うとおり男しか集まっていない。理由は寮が男女別で、どちらの寮も異性入館禁止なっているからだ。  「あの・・・。ありがとう。これ、よかったら飲んで。」  ミュアドがテーブルに4人分の紅茶の入ったカップを置いてお礼を言った。  小柄でオドオドしているミュアドは魔力が高いなどの理由で、Sクラスになった貴族ではない一般人のひとりである。  王族でもなく貴族でもない、ヴィシルの様に他の国からの来訪者でもなく、シュギのようにハキハキとしていないからか、今回の親睦会に部屋を使われたようだ。  頼まれて嫌だと断る前に強制的に決められてしまったのだろう。  「ありがとう。でも、そこまで気を使わなくていいんだよ。ミュアドは気を使いすぎだと思う。」 セズが笑みを浮かべてミュアドにお礼を言う。そしてすぐに心配そうな表情をした。  「でも・・・。」  「でもとか言わない。俺も最初はセズにどう接したらいいか戸惑ったけどな。ヴィシルがあまりにも普通にしてるから、悩んでんのバカらしくなったよ。ミュアドも普通にしてたらいい。本人だって普通に接して欲しいって言ってるだろ?」 納得いかなそうなミュアドに今度はシュギが言った。最初こそシュギもセズに気を使う様子があったが、親睦会をしているうちに普通に友達に接するのと変わらない状態になっていた。  「う、うん・・・。」  ミュアドにはセズに対しては徐々に慣れてもらうしかない。これから同じクラスでやっていかなければならないのだ。  そんなやり取りを聞きながらヴィシルはテーブルに置かれたカップをひとつ取り、紅茶をいただくことにした。  「そういえば最初の基礎が終わればパートナーとなる竜を探しに行くんだよね。早ければ来週って聞いたけど。」  「まぁ、来週あたりからだろうな。何かあるのか?」  「何かがあるわけじゃないんだけど、立場が立場なだけに期待が大きくてね。父さんも兄さんもパートナーにしている竜が結構強くて。」  「あぁ・・・。そりゃプレッシャーも凄くなるわな。」  竜の強さもランクで分けられているが、体躯の色が透き通るような色であればあるほど、竜の魔力も高く強さも増す。  各色の中でも光の加減でキラキラと身体が輝きを見せる竜が、その色を持つ竜の中では一番強いとされている。  そして、そんな竜の頂点に君臨する竜の王族である銀聖竜。その体躯は一見透き通る綺麗な銀でありながら、光によって虹色の輝きを放つ。  竜騎士を目指す者ならば誰もがパートナーにと望む竜である。しかし、竜の王族である銀聖竜はその姿を滅多に見せることはない。  過去に銀聖竜とパートナーになったのは、この国の初代国王であり、竜騎士がこの国に存在するきっかけを作った人物でもある。  その当時の伝承が今語り継がれているが、王が亡くなった後、パートナーであった竜は自分の国へと帰ったと記されていた。  実際は誰も知らないため、銀聖竜が他のどの竜よりも強いという、その存在だけが語り継がれて皆の憧れとなっている。  この数百年、銀聖竜が人の前に現れたという話はどこにもなく、銀聖竜はもういないのでは、と考える人も出てきているらしい。  「王族は強い竜とパートナーにならなければならないって決まりでもあるの?」  「王位継承権を持つ者の中で一番強い竜とパートナーになった者が次の王になるんだ。今までは長男が兄弟の中で一番強い竜とパートナーになってきているから、長男が継承するものと思われているけどね。」  聞いたヴィシルはその答えに驚いた。王位継承はパートナーにした竜の強さで決まるらしい。  ある意味、竜騎士を優遇するこの国ならではの考え方ともいえる。  「セズは王になりたいってこと?」  「なりたいかって言われたらなりたくないかな。俺は人の上に立つような力量があるとは自分で思えないし、王の器ではないことは自分でよくわかってる。それに、命令するのは苦手だから。どうせなら、皆でワイワイやっていたいよ。でも・・・。」  セザリシオは言葉を詰まらせる。なりたくないけど、自分がならなければならないような状況にでもなっているのだろうか。  このウェドリシア国もそうだが、ヴィシルの祖国でもあるギュシラン王国も王族から次の王が選ばれる。  「あの話は本当ってことか?貴族の意見がデラセア王子派とビーデリス王子派、そしてセズ派に分かれてるって噂。」  「やっぱり噂になってるんだね。兄さんたちのパートナーとなった竜は強くはあるけど、その竜種の中のトップではないんだ。デラセア兄さんとビーデリス兄さんのパートナーとなった竜は同ランクらしい。それに、父がパートナーとしている竜の方が強いんだ。」  「それで、セズがデラセア王子とビーデリス王子より上の強さの竜とパートナーになれたらって期待が出ているわけか。」  シュギの言葉にセザリシオは困った表情で頷く。すっかりシュギもセザリシオを愛称で呼ぶほど、あった壁も無くなっていて、親睦会は上手くいったようだ。  ウェドリシア国がパートナーにした竜の強さで次の王を決めていたことは、ヴィシルは初耳であり驚く内容でもあった。  素質や国民からの支持などというものは、王に必要とは思っていないのだろうか。  ウェドリシアの国民ではないヴィシルには、滞在する学生期間を過ぎてしまえば何の関係もなくなるため、気にしても仕方ないことでもある。  友人関係がいつまで続くかはわからないから完全に関係がなくなるとも言えないが。  少しだけ話をして、それぞれの部屋に戻ることにした。  シュギはミュアドと同じこのフロアに部屋があるらしいが、ヴィシルは他国からということで、王子であるセズと同じ最上階のフロアだ。  そこまでの待遇を望んではいなかったが、おそらくは学園長がヴィシルの父から何か言われたのだろう。  出来るだけ目立つことは避けたいが、変更が不可と言われてしまえば、この待遇も受け入れざるを得ない。  明日からは通常の授業が始まるが、竜騎士を育てるこの学園は竜をパートナーに出来なければ、竜騎士として授業を受けることは出来ない仕組みになっている。  卒業した後のいつかという期待は持つなということらしい。  学園で基礎を学ぶため、竜をパートナーにしてから2年という時間を取るため、1年の間にパートナーを見つけられなければ留年ということになる。  最短で卒業したいのなら、まずは1年のうちに竜をパートナーにしろということのようだ。  しかし、力量も魔力も竜の方が上であり、力ずくでパートナーにしようものなら返り討ちにされる。  心を通わせることが出来なければ、パートナーになることも、パートナーで居続けることも難しい。  基礎の中にはそれぞれの竜種に分けて性格や扱う魔法、好きな食材や嫌う行為なども入っているようだ。  これらの情報はシュギやセズがさっきまでいたミュアドの部屋で話していたことから知ったことである。  他国から来たヴィシルに学園のこと、この国のことも思い付く限りのことを教えると言って聞かされた。  どれだけのことを覚えていられるかはわからないが、教えてくれたことには感謝している。  ヴィシルはシャワーをしてから寝室となっている部屋に行き、ベッドに横になった。  平穏無事に学園生活が終わればいい。ただそれだけを願って目を閉じた。
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